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19話 圧倒的な魔物の群れと緊迫の瞬間

Penulis: みみっく
last update Terakhir Diperbarui: 2026-01-03 06:00:25

 その結果が、この町での暮らしだった。しかし、その身分はあまりにも重く、警備兵たちが彼女の命令一つで大忙しになるほど、厳重に秘匿され、守られていた。リーナの透き通る青い瞳の奥には、王女としての重圧と、お忍びの生活で得た自由への喜びと、そして今、ユウとの出会いによって生まれた新しい感情とが、複雑に混じり合っていた。

 ユウとリーナは、警備兵の詰め所を後にすると、さっそく森へと足を踏み入れた。手を取り合い、二人の秘密基地へと向かう道すがら、ユウは昨日の続きを尋ねた。

「今日は、どうしようか? 剣術の修業か、それとも冒険者ごっこか?」

 ユウの問いかけに対し、リーナは少し顔を赤らめ、彼の腕に抱きついたまま、小さな声で答えた。

「……わたしは、ユウが一緒にいれば……良いわ」

(あれ? あれだけ冒険者ごっこや剣術の修業って言っていたのに? 珍しいな。まあ……時間があるし、いっか……昨日は秘密基地作りで忙しく働いたし、たまにはゆっくりするのも悪くない)

 ユウは、リーナの意外な言葉に少し驚きながらも、その甘えを受け入れた。

「それじゃ、今日は……ゆっくりするか? 秘密基地で昼寝でも」

「じっとしているのも、つまらないわよね……せっかくユウと二人でいられるのに」

 リーナは、すぐさま退屈そうな声を上げた。じっとしているよりも、ユウと何か楽しい活動をしていたいのだ。

「そういえば、川があるって聞いたけど……探しに行く?」

 ユウは、昨日の父親の忠告を思い出しつつも、好奇心に抗えず、リーナに新しい提案をした。彼の透き通る青い瞳は、既に川で魚を獲る夢を見始めているようにキラキラと輝いていた。

 ユウは、川という言葉で、幼い頃に家族と遊びに行った記憶を思い起こしていた。その場所は、家からはかなり遠かったような気がするが、今いる町からの位置関係を、頭の中で描いている簡素な地図と、遠くに見える見覚えのある大きな山の位置から割り出し、ここからなら比較的近いと推測した。

 彼はリーナの顔色を窺い、彼女の透き通る青い瞳に、新しい冒険への期待の光が宿っているのを確認すると、立ち上がった。

 ユウが立ち上がると、リーナは待っていましたとばかりに、ごく自然な動作でユウの腕に当然のように抱きついた。もはや彼女にとって、ユウに抱きつくことは、抵抗も恥ずかしさもなく、当たり前の習慣になりつつあった。ユウの温かい体温と、力強い腕の感触が、彼女の心を最も安心させるものになっていたのだ。

「川なんて……遠くで眺めるくらいだったわ」

 リーナは、ユウの腕に抱きつきながら、少し寂しそうに呟いた。その言葉には、遠い記憶と、自身が王女という身分ゆえに、自由な遊びを許されなかった過去が滲んでいた。

(まあ……女の子だし、家に立派な風呂もありそうだしな……。こんな可愛い子が、泥だらけになって川で遊ぶなんて、裕福な家の娘(とユウはまだ思っている)としては、許してもらえないだろうな)

 ユウはそう推測し、リーナの言葉に深く納得した。彼は、この冒険が、リーナに新しい世界を見せてあげられるチャンスだと感じ、期待に胸を膨らませた。

 二人は川を目指して森の奥へと進み始めた。道中、何度か低級の魔物であるマッド・ポッドなどに遭遇したが、ユウとリーナは木剣を手に取り、冒険者ごっこさながらの連携で、軽やかに討伐して進んだ。リーナの剣術は、やはり素人離れしており、ユウもその指導を受けて動きが洗練されてきていた。

 しかし、しばらく進んだところで、二人は予想外の事態に遭遇した。草むらから、十数匹ものマッド・ポッドの群れが一斉に現れたのだ。低級で弱い魔物とはいえ、これだけの数に囲まれては、木剣だけではすぐに苦戦を強いられた。ユウは咄嗟にリーナを背に庇い、群れの突進を木剣で叩き払おうと奮闘した。

「くそっ、数が多すぎる!」

 その時、ユウの背後から、リーナの澄んだ声が響いた。それは、先ほどまでの可愛らしい声とは違う、凛とした、どこか神聖さすら感じる響きだった。

「――炎よ、我の敵を打ち払え、紅蓮の力よ集え!」

 リーナは、ユウの背中越しに両手を前に突き出し、口の中で高速の詠唱を始めていた。彼女の淡い金髪が、詠唱の魔力によって微かに逆立ち、透き通る青い瞳が、魔力の輝きを宿して強く瞬いた。

 詠唱が終わるや否や、リーナの手のひらの間に、オレンジ色の小さな光の塊が生まれると、それは瞬く間に直径三十センチほどのファイアボールへと膨れ上がった。

「ファイアボール!」

 リーナが鋭く叫ぶと、炎の塊は音速で魔物の群れの中心へと向かって飛翔した。

 ドォンッ!

 小規模ながらも迫力のある爆発音が森に響き渡り、炎と土煙が舞い上がった。集まっていたマッド・ポッドの群れは、爆発の中心から外側へと吹き飛ばされ、一瞬で泥のシミへと変貌した。地面には、黒焦げた跡が円形に残っていた。

 ユウは、初めて見る魔法の威力と、リーナの変わり果てた姿に、息を呑んで立ち尽くした。

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